中国吉林大学語学留学体験記

京劇人形 中国

国際中国語教師奨学金で吉林大学に一年間語学留学した体験記です。
写真は中国文化の先生が授業に持ってきた京劇の人形です。

授業

ビザが間に合わなかったので新学期に2週間ほど遅れて現地に到着。
クラス分け試験もなく、HSKが何級か聞かれて6級と答えるとテキトーに「本科二年级」のクラスに行けと言われました。

中国語の「本科」は大学の学士課程のことなので不思議に思ったのですが、コロナ明けで語学留学者が少なかったので、語学留学の高级一クラス(高级は上級の意味)と外国人向けの中国語の学士課程の二年生のクラスが合同授業になっていました。


中国の大学に語学留学すると授業は大体午前中のみですが、学部生と合同授業だったため授業数が多く午後にも授業があることがありました。
授業の質・先生の質ともに問題なしでした。


クラスメイトは学部生が中学から中国で暮らしていて中国語がネイティブレベルの北朝鮮人、高校まで日本で育って大学から中国に留学している日本人、韓中ハーフで高校から中国で暮らしている韓国人の3人、語学留学生が大学の交換留学で来ている韓国人、給費奨学金を得て留学しているベトナム人・アルゼンチン人・日本人(←自分)、夫の海外赴任に帯同している韓国人マダムという構成でした。


韓国人マダムは日本に8年間滞在(留学+就労)していたことがあり日本語が堪能だったので、休み時間はだいたいマダム(46歳)・自分(33歳)・学部生の日本人(20歳)の3人で日本語で話していました。

大変だった授業
前期:発音の授業。主に授業中に一人ずつ総合という授業の課文を読んで先生が発音を直すという授業。時々詩の暗誦をさせられた。期末試験での暗誦はあらかじめ準備ができるから良かったが、授業中に初見の詩を暗誦しろという無茶振りはたまらなかった。
後期:中国文学の授業。中国文学を読んで議論したり先生から内容について質問されたり、短編の恋愛小説を書かされたり、クラスで演劇をやらされたり、各自が詩を朗読した動画をクラス全員の前で再生されて公開処刑されたり。

寮は友谊会馆という建物の10階でした。授業は同じ建物内の1階で行われていました。給費奨学生は強制的に二人部屋でした。一人部屋は希望者数に対して数が少なく、大学院生や交換留学生に優先的に割り当てられるので、自費でも学部生はなかなか入れないようでした。二人部屋では自分が朝型、ルームメイトが夜型なのでベットの上に遮光式の蚊帳のようなものを設置してその中で寝ていました。中国の大学では複数人部屋の寮生活が強制なので現地の学生も使っているとのことでした。↓こんなやつです(画像)

この友谊会馆という建物はかなりの年代物のようで、寮の部屋は非常にボロくて狭かったです。勉強机に向かって座っていると通路が塞がってルームメイトが通れなかったり、部屋の中でスーツケースを開けるスペースがないくらいの狭さです。設備が古くて漏電からの火災が心配だということで寮の部屋の電圧を下げられドライヤーが使えなくなりました。排水溝からは大体いつも汚水の匂いが漂ってきていました(普通は下水管には匂いが逆流しないように弁がついているのですがこの寮の下水管には無いようでした)。この地域では冬になると気温が氷点下20度を下回るのですが、設備がボロいせいか冬になるとお湯の温度が20度台くらいまでしか上がらなくなりました。この「冬にお湯の温度が上がらない問題」は毎年発生しているようで、友谊会馆のグループチャットは冬になると外国人留学生たちの苦情で溢れかえっていました。何度も断水して修理していましたが直る気配はありませんでした。チャイナクオリティが炸裂していました。


自分は数年前に北京の清華大学にも留学したことがあったのですが、その時の寮は汚水の匂いもしなければボロくもなければ狭くもなく、冬にお湯の温度が上がらないこともなければ断水も半年に一回しかなく、部屋でドライヤーが使えないこともなかったので、中国の寮が酷いというよりはこの友谊会馆という寮が酷いのだと思います。


極め付けには留学終わりの退寮のときにゴミ箱がないといって罰金を払わされたのですが(なんと120元!「他のルームメイトが退寮する時には調べたのか?(絶対調べてない笑)」などと言って戦ったところ30元に値引きされました。因みに中国のゴミ箱なんて10元もしません笑)、後期のルームメイトに聞いたらその人の入寮時からゴミ箱はなかったと言っていて、前期のルームメイトに聞いたらゴミ箱はその人の私物で寮の備品ではありませんでした。山賊かと思いました。大学の留学生担当の先生に事情を説明して友谊会馆に罰金を返金してもらえないか聞いてもらいましたが、友谊会馆は「調査中」と言ってスルーしてきました。友谊会馆は自分史上最悪の宿泊施設でした!!(笑)

吉林省長春市の賃貸物件

寮の環境があまりにも酷かったので4ヶ月目(真冬の12月!)から大学から徒歩10分程度の場所に部屋を借りました。物件はこのアプリで探しました。↓

安住客

スラムのような寮の住環境にうんざりしていたので、周辺で一番綺麗そうな建物の部屋にしました。
家賃は月2500元(約5万円)でした。内部が二階建てになっている面白い構造でした。
冬でも普通にお湯が出るし汚水の匂いもしないしドライヤー使えるし洗濯機も使えるので快適でした(笑)
長期休暇の間は引き払って後期が始まってからまた借りました。

食事

外卖(ワイマイ、スマホアプリで注文するフードデリバリー)か学食かレストランか自炊という選択肢があります。


学食はメインキャンパスにしかないので友谊会馆からだと片道20〜30分かかりました。自分はバイキング形式の食堂が好きで運動がてらよく行っていました。バイキング形式の食堂では最初にトレーを学生証と同期して、トレーに料理を取るたびにとった分量の重さが自動で測られて値段が計算され、最後に料理をとってから30分経過すると学生証にチャージしたお金から代金が引き落とされるシステムでした。


北京にいた時は外卖でいろいろ美味しいものがあったんですが、この地方はあまり美味しいものがなかったです。クラスメイトに「外卖で美味しいのあった?」と聞くと「美味しいものはない」と返されていました。

観光

長春市内の史跡は伪满皇宫くらいしかないのでとくに観光するところがなかったです。北京に留学した時に中国の有名な場所はだいたい観光済みだったので、今回は数日まとまった休みがあった時にハルビンと海南島に行きました。


ハルビンは冬だと氷雪祭りという有名なイベントがありますが、時期はずれだったので聖ソフィア大聖堂と中央大街を観光してきました。一番面白かったのは宿泊したホテルの「外卖を客室まで届けてくれるロボット」でした。ハルビンに限りませんが中国の東北地方は車の運転マナーが悪く青信号で横断歩道を渡っていても右折か左折かの車がクラクションを鳴らしまくりながら猛スピードで突っ込んできます。


海南島は気温と湿度が高いので、暑いのが苦手な場合は観光する体力が持たないと思います。自分は体力がもたなかったので天涯海角五公祠に行っただけでした。

文明水準

吐痰(トゥータン、痰吐き)をする人が多かったです。道を歩いていると毎日のように「グアアアアアアッペエエエェェェッ」というような音が聞こえてきて痰が吐き散らされていました。


吐痰は北京などの大都市よりも地方の方がする人が多い印象です。北京の清華大学(中国トップ大学)留学中は学生が吐痰をするのは見たことがなく、大学構内では年配の用務員らしき人くらいしかしていませんでしたが、長春市では20〜30代の若い人でもよく吐痰をしていて、吉林大学の学生の中にも吐痰をしている人がいました。吉林大学の学生は一般の人よりは全体的にマナーは良さそうでしたが、マナーの良い人と悪い人の差がある印象でした。


友谊会馆のエレベーターでは降りる人が降りる前に乗り込んでくる人をよく見かけました。たいてい中国人の学生かアラブ系の留学生でした。まだ電車の方が降りる人が降りる前に乗り込んでくる人は少なかったです。若い人ではあまりおらず、一部の年配の人がドアが開くと同時に乗り込んでくる感じでした。


数年前は北京の地下鉄でも「降りる人が降りてから乗り込む」ということができない人が多くいましたが、今回北京に行ったら「降りる人が降りてから乗り込む」ができる人が多くなっていました。

裏話

現地中国人の対日感情:
留学時に40代後半だった中国人女性の先生の話です。
先生が教師になりたてだった頃(先生は博士号持ちなので20代後半か、今より20年ほど前なので2000年代前半)、日本人の留学生たちを引率して街に行ったところ、現地の中国人が取り囲んで罵倒してきたそうです。
先生は生徒を守るために必死に戦ったそうで、この話をしながら涙ぐんでいました。
この罵倒してくる人たちは実際に日本の統治を受けた年代ではなく、その後の反日教育を受けた年代と思われます。
先生の祖父母は「日本統治前は教育を受けられなかったが、統治後は教育を受けられるようになった」と言っていたそうですが、もちろん中国でこのようなことは大きな声では言えないとのことです。

同じクラスの20歳の日本人女性は、大学のイベント(外国人留学生は運動会の開会式で民族衣装を着て行進させられる、語学留学で成績が重要ではない私は仮病で休んだ)で和服を着て歩いている時に、年配の中国人から罵声を浴びせられたことがあるそうです。
普通の服装の場合は日本語を話しながら歩いている場合でも罵声を浴びせられたことはありませんでした。
黙って歩いている場合にはそもそも日本人だとバレません。


なぜ外国人向けの中国語の学士課程に中国語がネイティブレベルの学生がいるのか問題:
自分が合同授業を受けていた外国人向けの中国語の学士課程の二年生のクラスにも中学から中国で暮らしていて中国語がネイティブレベルの北朝鮮人がいましたが、その一学年上の三年生は5、6人いましたが全員が中国人とのハーフの外国籍で中国語がネイティブレベルでした。
入学時点ですでに中国語がネイティブレベルなのになぜ中国人向けの学士課程に入学せずに外国人向けの中国語の学士課程で学んでいるのかについて、クラスメイトと話していました。

そのクラスメイトによると、おそらく差別されるからではないかということでした。
その人は叔母が中国人と結婚しており中国人の親戚と話す機会があるのですが、中国人によると「結婚相手が北朝鮮人か日本人の二択だったら断然日本人が良い」らしいです。中国では北朝鮮は国同士の関係は悪くないが国家としては貧しく格下とみなされており、日本は国同士の関係は悪いが国家としては格下とはみなされていないようでした。

自分の寮の前期のルームメイトは日本人(お母さんが元中国人で現日本国籍なので実質日中ハーフ)で中国語ネイティブレベルで中国人向けの学士課程の経済学部に留学していましたが、大学の事務側が外国人の受け入れに慣れていないからなのか色々としなくていいような苦労をしていました。
中国人の学生は同じ学部ごとに複数人部屋の中国人向けの寮に強制入寮のため、寮ごとに管理されていたりして、授業で使う物品なども寮で配れらたりするそうです。
外国人留学生は中国人と同じ寮には入れず、外国人留学生向けの寮に住んでいるため、クラスで自分だけ授業で使う物品が配られていないということがあり、その度に関係各所に聞きに行っていました。

この人は高校卒業まで日本で暮らしていたのですが、以前から中国で暮らしていてこのような事情に詳しい場合は、大して学ぶことがないとしても安全な「外国人向け」の中国語の学士課程を選んでいるのかもしれないと思いました。


中国の数学の難易度は日本よりも高い:
数学の難易度は「(難しい)韓国・中国>>>日本>>>>>>>>欧米(易しい)」のような感じだと思います。
ルームメイトの経済学部の日本人に大学学部一年次の数学の教科書を見せてもらったところ、「arctangent(逆三角関数の逆正接)」など、日本の高校数学では見たこともないような内容が書かれていました。中国人の学生は大学入学前にこのような内容を学んでおり、難なく理解できるそうです。
その人は日本でも数学が得意な方ではなかったので、数学の授業が分からな過ぎて困っていました。

逆に欧米の数学の難易度は日本よりも低そうです。中国で成績が中の下くらいの人がアメリカに留学すると、成績1位で数学は満点というようなことになるそうです。自分は以前イギリスの薬学部の1年次に留学したことがありますが、食塩水の濃度を計算する問題(日本では小学校レベルでは?)ができない人が大勢いました。イギリスの大学の通信教育課程(学士号レベル)でコンピューターサイエンスを学んだ時には、日本では数学が得意な方ではない私でも数学系科目は常に90%以上得点できました。

国際中国語教師奨学金合格体験談

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